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【兄弟[子國極]】 焼け野原に二人で立っていた。 辺りは家や人の燃える匂いが立ち込める瓦礫の山で それでも僕は貴方が居れば生きていけると思っていたのに――… 【 兄 弟 】 強く握り締められた手が痛い。 「兄さま」 僕の手をしっかりと掴んで立ち尽くす兄に呼び掛ける。 兄は何の反応も示さず、定まらぬ視線でどこか遠くを見ていた。 辺りは一面瓦礫ばかりで、人や家の焼ける嫌な臭気が充満している。 吐き気がした。 僕等以外に生きている人間が見当たらない。 激しい爆撃の後だというのに気持ち悪いほど静かだった。 爆撃が音も殺してしまったんだと思った。 ふと繋がれたままの手に血が流れた。 見ると兄の病弱そうな細い腕に痛々しい傷が貼り付いていた。 顔を見上げる。 血や煤で汚れた端正な顔…こうして見ると、皮肉にも汚れた色がかえって肌の白さを浮き立たせて見える。 そしてその顔に据えられた聡明さの漂う二つの大きな瞳（いつも僕に、その双眸を細めて微笑みかけてくれた）…その瞳が、今はすっかり感情の宿らぬ硝子細工に成り果てていた。 僕はその時初めて気が付いた。 真に生き延びたのは僕一人だけだったのだ。 兄は心が死んでしまったのだ。 08.11.3 一年半前ぐらいにメモしてあったものを手直ししてうpしてみた。 重要なお知らせ@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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